わかるブログ

人生の後半に向かっていくにあたり、自分の引き出しの中身を色々書いて一旦空にし、新たに学びを深めていかざるを得ない環境を作ろうと思って始めたブログ

中期経営計画の必要性

日本国内の経営者にとってはなじみ深い中期経営計画、いわゆる中計。実はアメリカの企業は中計を発表する企業は非常に少ない。

 

日本企業の中には中期経営計画というものを作成する会社は少なくないと思う。3~5年を一つのサイクルとし、中長期の全社戦略や個別事業計画を策定したりするわけだが、コンサルタントが支援する場合もある。中計策定支援は、戦略コンサルティングファームの中では「戦略系」と呼ばれるプロジェクトに分類され、(せっかく戦略ファームに入ったのだし)「インプリ系」よりはやってみたいというコンサルタントが多く、人気が高かった気がする。

 

しかし、その機会に何度か恵まれた自分は、正直あまり中計策定支援は好きではなかった。理由は比較的単純で、「策定する意味が分からなかった」から。3~5年の間に事業を取り巻く環境は大きく変わるし、“盛った”数字を積み上げた事業計画などなぜ策定するのか、しかもそれを対外発表までして大丈夫なのか、と思っていた。中長期の会社のビジョンを定める事は重要だし、社員に方向性を示すことは意味があると思うが、むりやり根拠をつけた数字を作るのに莫大な工数をかけ、(社内活用ならまだしも)それを対外発表までするのは、個人的には気持ち悪かった。

 

と、感じていたので、当時「中期経営計画を発表する」という事は国際的に一般的なのかを調べたことがある。その中で分かったことは、中計というのは実は非常に日本的で、アメリカ企業で体系的にまとまった経営計画や目標数字を発表しているところはほとんどないという事だ。正確には忘れてしまったが、ダウ平均を構成する30社をチェックして、日本型の中計を発表していたのは1~2社しかなかったと思う。

 

合理的に考えれば(そしてアングロサクソンは日本人よりはるかに合理的だといつも思う)、当たり前の事なのだと思う。思いつく理由は2つ:

 

1つは、未達のリスクが高い中計を発表する、その事自体のリスクが経営者にとって非常に大きいため。取締役会の過半数社外取締役がしめ、物言う株主も多い米国では、中計のような業績ガイダンスを出して未達の場合、経営者はその立場を追及を免れず、場合によっては解任されるだろう。そのため、不確実性の高いものを社外に公表するという事自体、非常に大きなリスクが伴う。

 

もう一つの理由は、これは完全に仮説だが、今の時代そもそも中計の必要性が薄い、と米国の経営者は判断しているからではないか。比較的安定な経営環境の中では、経営計画はリソースの配分を再考し、経営の効率性を高めるために有効なのかもしれないが、ByteDanceのように、ハイテク企業が急速な発展を遂げ業界を壊していく昨今では、むしろ計画を立てることは外部環境に対応する柔軟性を損ねる上、革新的な取り組みをするのには不向きと判断しているように思う。

 

日本国内で当たり前のビジネス慣習が、世界標準に照らし合わせて大切か、という視点は常に大切だと思う。