ハンバーガーの位置にみるデジタル意識度
つまらない事だが、最近気になったことを書き留めておきたい。
以前、「戦略コンサルが、猫も杓子もデジタルに走る理由」というエントリーを書いた。近年、戦略コンサル各社がデジタルのケイパビリティー強化を加速し、「デジタルトランスフォーメーション」といったバズワードを打ち出して市場の拡大を図っていることは承知の通りである。しかし、日本の伝統的企業がデジタルケイパビリティーの獲得に苦労していることからも容易に想像できる通り、これまで非デジタルだった企業が真のデジタルケイパビリティーを構築することは簡単なことではない。ましてや、コンサルティングという、デジタルとは無縁の労働集約的な仕事をしてきた会社が、デジタルの発想や文化を体現することは、一朝一夕にはできない。
それが分かっていれば、クライアントとしては当然以下のような疑問を持つべきで
ある:
「マッキンゼーやBCGといった会社は、本当にデジタルの事が分かっているのだろうか?」
その会社のデジタル意識度、というのは案外ホームページを見ればわかるものである。デジタルの意識が高い会社は、ホームページに最新のデザインが取り入れられていたり、ユーザーのサイト上の行動をよく研究した導線を構築しているものである。もちろんホームページはその会社のケイパビリティーとは本質的には関係がないのかもしれないが、クライアントの立場からすれば、「自社のホームページもカッコよく作れない会社にデジタルうんうんと言われたくない」というのはごく自然な意見だし、当然といえる。
そういう観点でMcKinseyとBCGのホームページをスマホで見てみたのだが、残念ながら、ハンバーガーボタンの位置だけの判断でも、BCGが及第点で、McKinseyは落第点だろう。
まず、McKinseyはハンバーガーボタンが左上にある、といういかにも「旧態依然」としたデザインである。大昔はフェイスブックもハンバーガーボタンが左上にあったが、じきに改善され、今はすべて画面の下にタブバーとして配置する形になっている(むしろこのトレンドを作ったのはフェイスブックなのかもしれない)。いずれにしろ、ユーザーの大部分が右利きであり、スマホがどんどん大きくなる中で上部は押しにくい事を理解していれば、こんなUIにはならないし、デジタルに理解のある人間がこだわって作っていればこんなUIをよしとはしないはずである。
一方でBCGが及第点といったのは、少なくともハンバーガーメニューが右上にあるからである。右利きの人にとっては、(左側に置かれるよりは)押しやすい位置にあるかもしれないが、スマホ画面が大きくなる中では右上もかなり押しづらいのかもしれない。しかしながらこの右上パターンは未だ多くの企業に見られ、一応まだ主流の一つと言えるかもしれない(すぐにすたると思うが)。
最近訪れたHPの中で、自分がいいなと思ったのは博報堂のもので、ハンバーガーボタンは右下にある。しかも、正確にはハンバーガーではなく、2本線で表現された比較的新しいデザインで、押しやすさを十分考えていると思われる。
博報堂がデジタルに優れた会社かどうか、実態は知らないが(おそらく実態は違うのだろうが)、少なくともUXについて配慮はしており、なんかこんな会社だったらデジタルについて偉そうに言われても仕方ないかなと思えるのである。