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人生の後半に向かっていくにあたり、自分の引き出しの中身を色々書いて一旦空にし、新たに学びを深めていかざるを得ない環境を作ろうと思って始めたブログ

DXに関する雑感(第2回):DXに成功したけりゃ4つの事を抑えようね、という話

昨日のエントリーで、DXとは本質的には「社内にデジタル文化を醸成する事」だと書いた。現状がどんなに非効率だろうが、今この瞬間はデジタル技術を一切使っていなかろうが、関係なく、会社の文化が変わればDXは自然と進んでいくのである。つまり、「使えるところにデジタル技術使っていくのは当たり前でしょ」という事に何の疑念もいだかず、個人の生活においてもごく当たり前にそれを実践している人たちが会社を構成すれば、既存の業務の非効率に対して、「これってこのSaaS導入したらいいんじゃね」となるわけで、生産性は必然的に上がっていく。そういった人たちで構成されているであろうメルカリは、だからこそ「DXの余地はない」と勝手に思われるわけであり、実際に社内にデジタル技術を取り込む力は日本の伝統的企業よりはるかに高いだろう。

 

上記のようにDXを理解すると、DXを成功に導くために抑えておくべき点が4つある事に気が付く。

 

1. 社長がコミットする事

DX成功のためには、CTOでもCIOでもCDOでもなく、代表取締役社長がコミットする事が必須である。

 

会社の文化というものは、その会社の規模に関わらず、社長で決まる、と考えている。逆に言えば、会社の文化を変えられるのは、社長だけ、なのである。社長が変わると、例えそれが1兆円規模の企業であろうと、驚くほど会社が変わる事があるのはこのためである(よく例えに出されるのは、少々古いが、2010年に破綻したJALの再建だろう)

 

全社レベルのDXとなれば、複数の部門にまたがってオペレーションを変えたりする必要も出てくるだろうし、現実的に社長のリーダーシップなしにはDXは進まない。

 

2.長期にコミットする事

 文化を変えるという事は非常に時間がかかる事であり、長期間のコミットメント、というものが必須となる。実際にシステムの導入に年単位の時間がかかる事はざらにあり、「効果が見えるまでには時間がかかるけど、もう腹をくくってやり続ける」という覚悟が必要になる。

 

最近よくある話が、「スモールにまずPoCをやって、うまくいったら導入しましょう」というものだが、正直PoCがしょぼい結果になって、途中で頓挫している事例が大半だ。傍から見ると「PoCって言葉を使いたかっただけだよね」と思えるほどである。PoCが悪いというわけではないが、そもそも「ConceptをProofしなくてもいい、確実に成果がでそうな取り組みはやりきったのか」、「どの取り組みはPoCが必要で、失敗するリスクはどの程度か」など、DXの取組の全体マップをしっかり描いて、できるところからやりきる、時間がかかってもやり通す、という覚悟をもって進めているDXにはなかなか出会わない。

 

3.内製化する事

DXが進まない企業ほど、外部のベンダー依存が激しい。しかし、DXとは文化を醸成する事であり、成功の本質は「内製化」にある。最終的には自前で出来るようにならなければならない。もちろん、一時的に外部ベンダーの力を借りることも必要だろうし、全行程を内製化する必要はないが、変革の主要な部分は自前で出来る、というのが理想的である。

 

そのことを理解しておらず、「よくわからないから丸投げしよう」という企業はいつまでも変わる事ができず、そしていつまでも莫大なシステム開発・管理費を払う事になり、ベンダーのカモになるだけなのである。

 

4.人員整理を断行する事

DXとは生産性をあげる取り組みである。業務の生産性が上がれば、必然的にある業務にかかる人員数は少なくて済むようになり、人が余る。こういった余剰人員をリストラする事、この覚悟がなければDXの効果を享受できない。これは厳しい意見のように聞こえるが、言われてみれば至極当たり前の事ではないだろうか。

 

日本企業でよくある話が以下のようなものだ:

山田さんと鈴木さんがいます。

山田さんは業務AとBを、鈴木さんは業務AとCを行っています。

新たなシステムを導入し、業務Aは完全に自動化されたので、山田さん・鈴木さんの工数がそれぞれ50%空きました。

部長は空いた50%の工数で、「より売上につながる作業をしよう」と号令をかけました

 

いやいや、本来は、山田さんか鈴木さんに業務を寄せて、どちらかを解雇する事が正しい。生産性がそれだけ向上し、業務が効率化したのだから。(日本では解雇規制もあり、現実的に解雇が難しいのは理解した上で)上記のような状況で、システム導入のROIを計算すると、「結局人も減ってないし、実際にコスト削減になってない」結果になるわけだが、大企業はその事実に目をつむって巨額のシステム投資を続けている実態がある。

 

また、デジタルの文化を醸成していく過程で、抵抗勢力というものが必ず現れる。「自分は逃げ切りたいから余計な取り組みはしたくない病におかされた部長」とか、「興味のあるふりをしてやたら検討に時間をかけてできない理由だけ探す課長」とか、そういった人間である。そういった人材も、最終的にDXが仕上がった後の組織には必要ないから、タイミングを見て本来リストラすべきであり、そういった事を繰り返して文化が変わっていくのである。

 

 

こうして4つ並べてみると、日本がデジタル後進国である理由がわかる気がする。

社長が高齢の場合が多く、デジタルリテラシーも低いため社長自らがDXの抵抗勢力となっており、任期も短いので「事なかれ主義」で終えたいという意識が強く、エンジニアという人種の評価が低いが故に高い年収を払って雇う意味も分からないから外注に頼りまくるうちにSIerという価値を生んでない業界がうまれ、雇用の柔軟さがゼロの法制度のお陰で正社員がガチガチに守られ、生産性があがって仕事がなくなろうがクビにできない。それが日本である。

 

こんな国でDXが進むわけねーじゃん、という絶望感しか生まれないわけで、コロナ禍であるにも関わらず通勤電車に平気でのって、「上司が機械音痴だし、なんか不安だから」という理由でリモートワークも切り上げてオフィスに行く国民をみて、その「DXが進まない」という考えは確信に変わるわけである。

 

さて、そんな国、日本で、DXをひたすら叫んでいるコンサル各社、特に戦略系のコンサル各社は正気なんだろうか?彼らの取組は成功するのだろうか?逆に、成功するとすればどのような道筋があるのかだろうか。

 

次回、気が向いたら、そこについて簡単に書いてみたい。