ボリス・ジョンソンのBrexit戦略は分かりやすい
本日は時事ネタで。
イギリスのEU離脱、いわゆるBrexitが大詰めを迎えている。10月31日に離脱期限が迫っているが、ボリス・ジョンソン首相とEUの駆け引きは実に面白いなと思う。
今イギリスのメディアを見ると、ジョンソン首相が議会の開催日を伸ばした事に対して、野党から(のみならず一部の与党議員からも)避難が集中している様子が連日のように報道されているが、この状況を正しく、というか論理的に理解すると、下記のようになると思う:
今の離脱案に対する議論はしつくされた:
- 議会の開催日の延期は、Brexitに関する議論の時間を野党から奪うために行っているという報道のされ方をしているが、これは誤解だ
- ジョンソン首相の立場に立てば、もう今の離脱案に対する議論はしつくされ、結果としてメイ首相時代に3回も否決されたのだ
- なので、これ以上議論しても無駄で、議会に「ボールは既にない」状態という見方ができる
なので今度はEU側が議論するしかない:
上記のように考えると、ジョンソン首相の策は極めて論理的だと思う。ボールは自分たちになく、EU側にあるのだ、と明示しているわけだ。
これによりEUがno-dealなのかdealなのかを決めなくてはいけなくなる。
そしてジョンソン首相の読みは、これまで頑なな態度をとってきたEU側が、最後の最後で折れて、no-dealを回避すべく離脱案の修正に応じる、というものだろう。なぜなら、no-deal Brexitが起こり、貿易が混乱する事で一番悪影響が生じるのがEU最大の経済大国であるドイツだからだ。
ドイツは直近の経済指標が非常に悪く、リセッションに突入しているといっても過言ではない。また破綻寸前のドイツ銀行問題も抱えている。そんなドイツの貿易相手国と言えば、取引額が大きいのは米国と中国なわけだが、実はドイツにとって最大の貿易黒字国はイギリスなのだ。つまり、no-deal Brexit ⇒ 貿易が混乱 ⇒ ドイツ経済が死ぬ=EU経済も死ぬ、という事だ。これを回避するために、ドイツを中心に離脱案修正に傾く可能性がある。
しかしそこに至るまでに、EUのプライドもあり、面白い駆け引きが行われているなと、各国首脳の表現などを見ていると思う。世紀のBrexitショー、どうなる事やら。