わかるブログ

人生の後半に向かっていくにあたり、自分の引き出しの中身を色々書いて一旦空にし、新たに学びを深めていかざるを得ない環境を作ろうと思って始めたブログ

新卒はとりあえず規模の大きいファームに入ろう

コンサルティングというのは規模の経済が効く業種だ。なので、新卒は極力大きなファームに入った方が、色々と経験できて面白いと思う。

最近知り合いの学生さんから就職の相談を受けた。内容は以下のようなものだった:

規模は小さいが尖った案件をやっているブティックファームと、マッキンゼーやBCGのような規模の大きいファームと、どちらに行った方がよいのか?自分は性格的にも規模の小さいファームの方が向いていると思うのだが、、、

 

以前のエントリーの繰り返しになるが、人生の選択に答えはない。自分が選んだ道が正解であり、そのように歩んでいくのが幸せだと思う。なので、正直上記の質問も「自分が信じる方に行けばよい」という事なのだが、自分の経験からあえてアドバイスするのであれば、「躊躇なく規模の一番大きいファームに行った方がよい」と答える。自分の趣味・嗜好など関係なく、躊躇なく、である。

 

コンサルティングは明確に規模の経済が効く業種だと理解している。「規模の経済」と言っても、ここでは鉄鋼業や石油化学産業でいう規模の経済、つまり生産量の増大によって原材料や労働力に必要なコストが減少する、という事とは少し違う意味合いで用いている。働く社員の視点から見ると、コンサルティング業界において、規模の大きさは以下のようなメリットをもたらす:

  • 規模が大きければ大きいほど、案件の種類が多い:小さいファームではデューデリばかり、といった事もあるが、規模の大きいファームでは案件のポートフォリオが多様で、M&Aもあれば新規事業開発もあり、中計策定もある、といったように案件の選択肢が広い。コンサルに来る人の多くは「色々経験したい」と思っている事が多く、これを満たせるのは規模の大きいファームだけである
  • 規模が大きければ大きいほど、学べる知見も深い:多様な案件をやっている、という事はそれだけ知見がたまっているわけで、活用できるリソースが非常に多い(という意味で、まさに規模の経済で、大きいファームほど同じ質のアウトプットを作るのにかかるコストは低い)。社内の過去のプロジェクト資料を見るだけで色々学べる、リサーチャーに頼めばすぐマニアックな市場のデータも取れたりするのは規模の大きいファームならではだと思う
  • 規模が大きければ大きいほど、一人の上司に人生を左右されるリスクが下がる:オフィスの規模とパートナーの数はシンプルに比例する。規模が大きいオフィスだと30人以上パートナーがいたりするわけだが、これだけ多いと、一人の人に人生を左右されるリスクが下がる。オフィスの半分くらいのパートナーに嫌われても、残り半分に気に入られていれば生きていける、こうった事は規模の大きいファームならではであり、「働く人を選べる」という自由度は極めて大切である(ただしこれはマネージャーくらいまでであり、それ以上に上がろうとすると数名のパートナーに人生を託しながら生きていく構造は、ファームの規模が大きくても変わらない気がする)。
  • 規模が大きければ大きいほど、色々な社内制度が整備されており、チャンスが大きい:規模が大きいとそれだけ色々社内制度が整備されているので、働きやすいしチャンスも多い。クライアント先に出向という形で1年いけるとか、どんな学位でも留学してとってくる費用を出してくれるとか、そういった仕組みは規模の大きいファームならではだろう。

 

ここまで書いて、1点補足が必要な事に気が付いたが、規模とは「ローカルのオフィスの規模」を重視した方がよい。例えばグローバルで2万人規模のA社と、1万人規模のB社があったとして、東京オフィスだけで比較するとA社は100人、B社は300人だったとする。この場合B社に行った方がよい。東京で入社する人にとってあくまで重要なのは東京オフィスの環境である(もちろんグローバルネットワークがある事は重要だが、、、)

 

自分がBCGに入社したころは、東京オフィスのコンサルタントの数で比べるとマッキンゼーとほぼ同じだったが、BCGはリーマンショック東日本大震災の最中でも規模を積極的に拡大する戦略をとり、その後数年で(自分が在籍している間に)、東京オフィスだけで見ればマッキンゼーのほぼ2倍の規模になった(現在はマッキンゼーも規模を急拡大しており、その差はかなり縮まっているが、、、)。そういった時期にBCGに在籍できたのはとても幸せだったし、同時にその期間、東京オフィスだけで比べればBCGの方がマッキンゼーよりも経験や成長の機会が圧倒的に多かったと思う。

 

ファームは自分のつまらん趣味・嗜好でなく、シンプルに規模で選ぶ、これは結構大切だと思う。