わかるブログ

人生の後半に向かっていくにあたり、自分の引き出しの中身を色々書いて一旦空にし、新たに学びを深めていかざるを得ない環境を作ろうと思って始めたブログ

「成長できる」をブランド化する

戦略コンサルが世の中にもたらした最大のイノベーションは、『“成長できる”という謳い文句で優秀な人材を集める仕組みを確立した事』にあるのではないか

 

戦略コンサルが世の中にもたらしたものは、いいもの悪いもの含め色々あると思うが、彼らの一番のイノベーションは、『“成長できる”という謳い文句で優秀な人材を集める仕組みを確立した事』ではないだろうか。誤解のなきよう明記しておくと、別に皮肉を言いたいという意図は全くなく、純粋に、これは本当に凄いな、賢いな、と自分で心底関心してしまう次第である。

 

コンサル業界も2000年代前半以前に比べれば大幅にホワイトになり、働きやすくなっているのだが、平均的な事業会社に比べればはるかに労働時間が長く、はるかにプレッシャーも大きい事は間違いない。一般的に見ればパワハラまがいの行為も起こりがちな業界である。しかし、それは「成長のため」であり、「プロフェッショナルになるために必要なのだ」とブランディングするわけである。それは特に日本では大成功を収めているように思う。容易に想像できるその要因は

  • 日本という国自体が、人口減少も相まって衰退していくことは明白であり、
  • そのこと自体を多くの学生・サラリーマンが意識的/無意識的に理解しており、
  • 心のどこかで、「なんらか成長しないと食っていけなくなるのでは」という、将来に対してどこか恐怖心のようなものを持っている

からではないか。そのおかげで(それだけではないと思うが)、「成長したい」と思っている人の多くは、コンサル業界を目指してくれる。

 

しかし、よく考えるべきである。「成長したい」という志望動機を平然と掲げて面接に来る、特に中途採用の候補者に対して、まず自分はこう問いかけるようにしている。「成長の定義は何ですか?」と。これにすら答えられない人もいる。この問いに答えられた場合、次に問うのは、「ではなぜ成長したいのですか?」だ。これに答えられる人は少ない。

 

「成長したいから」という理由を掲げてある組織に所属したい、と言っている段階で、あなたは自分の成長をその組織に頼っている。もうその時点で自分の運命をその組織に預けてしまって、あとは「成長させてくれる」と勘違いしているのだ。声を大にしていいたい。そんな事は起こらないし、考え方そのものが間違っている。成長は自分で定義し、たとえ戦略コンサルに所属しても、その環境を社内で「勝ち取っていく」のは自分なのだ。そのことを理解して入社してくるものと、漠然と「成長させてくれるんだろうな」と思って入ってくる人間で、実際の成長速度は100倍以上の差がつく。全社の、「成長を自分で勝ち取る」意識で入ってくる人間は、Day1から、パートナーの時間を抑えて挨拶に行く、自分が活用できる社内リソースを調べて把握しに行く、色々な社内の知見を読み込む、といった能動的アクションを自然ととるものだ。そういう人は、そもそもどんな環境にいても成長をしている。

 

マッキンゼーには、Make your own McKinseyという言葉がある。これは平易な言葉でぶっきらぼうに言い換えれば、「あんたの成長なんか会社は知らん。会社のリソース使っていいから好き勝手成長してくれ」という事である。自分で成長を定義して、成長していく環境なのであり、それはどの事業会社に入っても同じことだと思う。

 

ついでに書いておくと、コンサル会社に勤めていた時に自分が採用したいなと思っていた人間は、「コンサルティングが好きな人間(≒コンサルティングに強い意義を見出している人間)」であって、成長を求めてくる人ではない。なぜならば、クライアントに対する付加価値に差が出るから。コンサルティングをしてる理由が、「自分が成長できるんで」と心の中で思っている人間と、「自分はコンサルティングが好きなんで」と思っている人間では、確実にアウトプットに差が出るし、その想いはクライアントにも伝わるものである。クライアントは当然コンサルティングが好きな人間にサーブしてもらいたいと思っている。この仕事が天職だと思っている人と話をするとエネルギーをもらえるのと似ている。つまりは、「好きな事を仕事にしろ」という以前書いたメッセージにもつながっていると思っている。

 

繰り返す。戦略コンサルに来たから成長できるのではない。自分を成長させるのは自身の明確な意識であり、それに基づく行動なのである。