わかるブログ

人生の後半に向かっていくにあたり、自分の引き出しの中身を色々書いて一旦空にし、新たに学びを深めていかざるを得ない環境を作ろうと思って始めたブログ

コンサルに依頼すべき仕事、依頼すべきでない仕事

コンサルティングファームには、その特性上、付加価値を発揮しやすい仕事とそうでない仕事があり、うまくコンサルを使いこなせる企業はその点を十分理解できている

コンサルというのは、顧客にとってはどこまでいっても「第3者」であり、かつ「ロジカルさ」を求められる。この2点、つまり、第3者である、という事と、ロジカルに問いに答えるしかない、という特徴から、コンサルが付加価値を発揮しやすい仕事とそうでない仕事が存在している。コンサルの使い方が上手いな、と思う企業はこの点を意識的か無意識的か、十分に理解しており、彼らが付加価値を発揮しにくい仕事は決して依頼しないのである。

 

以下、自分の経験も踏まえ、コンサルが付加価値を発揮しやすい仕事、しにくい仕事の代表例を書いておく:

 

付加価値を発揮しやすい仕事(=依頼すべき仕事)

  • デューデリジェンス
    企業買収などの際に行われるデューデリジェンス(DD)は明確にコンサルが付加価値を発揮しやすいタイプの案件である。まず、そもそもDDは客観性を担保するためにも第3者に依頼すべき事項だ。社内の人間だと、かなりバイアスがかかったシナジーを織り込んでしまったりするので、業界に知見をもったコンサルのフラットな目が重要だ。また、収益モデリングを行ったりすることもコンサルの得意領域であり、結局はロジカルさが生きる世界である
  • Post Merger Integration
    M&Aがらみで言えばPMI(PMI)も第3者が活躍しやすい場面だろう。これまで関係なかった二つの組織の人間をうまく融合させるのに、仲介役が必要だ、というのは感覚的にもわかりやすい
  • コストカット
    コスト削減系の案件もコンサルの強みが生きやすい。結局コストカットは理詰めで考えていく事が重要で、またコスト削減を社内の人間が言うと人間関係のもつれが生じやすいが、第3者が指摘した、という事にしておくと社内政治を乗り越えやすい

 

付加価値を発揮しにくい仕事(=依頼すべきでない仕事)

  • 新規事業開発
    これはコンサル内部の人間は十分理解している(が、クライアントには当然言わない)ことだと思うが、新規事業案を創出する、新規事業を立ち上げる、といった事はコンサル(少なくとも外資コンサル)に依頼してはいけない。正直自分の経験だけで言うと、新規事業系の案件をコンサルに依頼している企業で、新規事業を実際に立ち上げられた企業はゼロである。そこに何億もつぎ込んでいる姿は、正直みていて悲惨だし、こちらも申し訳なくなる。

    そもそも、コンサルは第3者であって、新規事業立上げを「自分事」としてとらえることはない。もちろん成功報酬型でやる、といった形もあるかと思うが、スタートアップと同じで、事業化には相当な熱量が必要であり、それは社内の人間が担う必要がある。

    また新規事業案を出す場合も、コンサルは顧客に説明できるよう、あくまでロジックで出さなければいけない。そうするとどうなるか。例えばカーナビにテレビをつける、みたいな発想しか出てこないのである。カーナビについていない機能をロジカルに洗出し、テレビってないよね、ってなって、そのニーズをユーザーに無理くり確認して、提案するのである。でも蓋を開けるとそもそもカーナビ自体が(ロジックではなく一人の天才が作り出した)スマホに駆逐される、といった事が起こるのだ。新規事業をロジカルに、再現性高く出すことは重要であるが、現場の体験や一人の人間の強い思いに支えられてないと事業化には至らないことが多く、そこも社内の人間にしか担えないのである。

 

コンサルは何が得意で何が不得意か、依頼する企業の側も十分考え、うまく使って頂きたい