わかるブログ

人生の後半に向かっていくにあたり、自分の引き出しの中身を色々書いて一旦空にし、新たに学びを深めていかざるを得ない環境を作ろうと思って始めたブログ

戦略コンサルはつぶしがきくのか?

戦略コンサルを目指す学生から質問を受けた。曰く、「戦略コンサルはつぶしがきくのですか?」と。戦略コンサルを目指している、という人間と話す時はこちらもスイッチが入るので、「まず“つぶしがきく”ってどういう意味で使ってるの?」と尋ねたくなる気持ちをぐっとこらえ、とりあえず「つぶしがきくかどうかを気にしている人間には、残念ながらつぶしは全くきかないですよ」と答えた。

 

戦略コンサルがつぶしがきく(ここではシンプルに「幅広い業種の会社に転職しやすい」という意味合いで使っている)、というのははっきり言って幻想だと思う。その理由は:

  • そもそも他社に行っても活躍できるのは、ファームの中でもパフォーマンスの高いトップ層だけ
  • 各ファーム大量採用を進める中で、コンサルタントの質が落ちており、
  • その結果、他社も「戦略コンサル=仕事ができる人」では必ずしもないことが分かっており、選別の目が厳しくなっている
  • 加えて、ex戦コンが世の中に増えるにつれて、レファレンスも取りやすくなり、さらに厳しく選別される

からである。

 

まず、一般的に知られているように、組織の中では、仕事メッチャできる人:普通の人:仕事できない人、の割合は、2:6:2に落ち着く。これはMcKinseyだろうがBCGだろうが、日本の事業会社だろうが、どんな組織でも同じである。このトップ2割に入るような人は、どこの会社に行ってもそれなりに高いパフォーマンスを示す。彼らは昨日のエントリーで書いたようにラストマンシップを持っており、仕事の質が圧倒的に高く、リーダーシップも持ち合わせている。こういった人は、そもそもキャリアについて「つぶしがきく」といったつまらない発想を持ち合わせておらず、自分のやりたい事を実現していく。ファームを真っ先に(ポジティブな理由で)辞めていくのも彼らである。他社から見ると、こういった人こそまさに採用したいわけで、ましてやMcKinseyやBCGがスクリーニングした学歴もピカピカの人材ならなおさらである。

 

残りのうち、最下層の2割はどこに行っても活躍できないことは言うまでもないが、6割の人たちはどうか。一昔前なら、(McKinseyやBCG卒なら)学歴はピカピカだし戦略コンサルだし、という事で他社も喜んで採用したのかもしれないが、近年この6割の質は急速に落ちていると考えざるを得ない。まずトップファームでも規模を維持するために年間100名を超えるようなペースで採用しているわけで、それだけでも「全員が優秀なはずがない」と容易に想像できる。加えて、近年特にオペレーション系の案件が大多数を占めており、本来の戦略コンサルとしての能力を鍛える場が失われているのは事実である。オペレーション系ばかり経験している人は、「日本の大企業のおじさんのお尻叩くコツ」は体得しているかもしれないが、肝心の問題解決能力や様々なビジネスシーンを乗り切る知的体力は身に着けていない。そういった「2軍」人材がトップファームにもいることは他社もよく知っており、「2軍は勘弁してほしい。採用したくない」という声は実はよく聞くようになっている。

 

さらに、世の中にexコンサルが増えるにつれて、レファレンスをとる事が比較的容易になっており、他社でも採用時にその人の社内でのパフォーマンスを調べようと思えば調べられる状況にある。残念なことに戦略ファーム(コンサルファームはどこも全般的に)はどこもうわさカルチャーなので、社内のレピュテーションは極めて正しいことが多い。レファレンスをとって評判のいまいちな人は採用しないほうがいいし、それがよく知られるようになっている。

 

まあつまりは、地道にちゃんと努力して、自分のパフォーマンスをあげましょう、目の前の仕事をきっちりこなして能力を高めましょうという事だ。それが結局市場の評価に反映されるのである。