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人生の後半に向かっていくにあたり、自分の引き出しの中身を色々書いて一旦空にし、新たに学びを深めていかざるを得ない環境を作ろうと思って始めたブログ

マッキンゼーとBCGは何が違うのか(その2:本質的な違い)

マッキンゼーとBCGの細かい違いはたくさんあれど、本質的にはそれらは全て「組織の作り」の違いに起因するし、少なくともそう捉えると妙に納得できると考えている

 

結論から書くと、体感としてマッキンゼーとBCGは驚くほど違う。同じコンサルティングを生業としているものの、それぞれの組織の中にいると、「同じ業界の会社なのか?」と思うほどである。特にBCGを経験してからマッキンゼーに行った身としては、マッキンゼーは天国のように映り、実際社内のまわりの人にも良くそう伝えていたし、コンサル業界でこんな会社があるのか、と思うほど過ごしやすい、まさにエクセレントカンパニーだった。これは個人的な見解ではあるものの、ただ、同時期にたまたまマッキンゼーに在籍していた元BCGの人と話しても全く同じように感じていたので、「明らかに違う」というのは事実なのだと思う(逆もしかりで、BCG在籍中にマッキンゼーからBCGに来た人と何人か話した事があるが、だいぶ違うと感じるらしい)。

 

個別具体で何が違うかはさておき、なぜ同じコンサル業界の会社で、「全く違う」と感じるのか。色々な捉え方があるのかもしれないが、本質的には下記の2点が原因であると考えている。少なくとも、そのように考えると、個別具体の違いが全てそれらに紐づけて考える事ができ、妙に納得できる、との理解に至っている。

 

違い1)組織の進化のレベルが異なる

  • 進化レベルが異なると共に、「Why」の設定のされ方が異なる

違い2)組織の「お財布の場所」が異なる

 

 まず違いの1点目について。これはティール組織について色々勉強している中で気が付いたことなのだが、マッキンゼーとBCGで組織の進化のレベルが異なる(下図参照)。「テール組織」の著書であるフレデリック・ラルー氏の組織経営の進化形態にあてはめると、マッキンゼーはGreen組織だと思う。Valuesと呼ばれる価値・行動規範(Valuesに対してしっくりくる日本語訳がないが、、、)が明確に共有されており、ありとあらゆる場面でそれに基づいて運営されているのがマッキンゼーの大きな特徴であり、それがマッキンゼーマッキンゼーとたらしめているといっても過言ではないだろう。マッキンゼーの人たちは、外から見ると「宗教的」に見えるのは、このValuesに従っているためである。

 

そしてもう一つ重要な事は、エクセレントカンパニーに共通してみられる、Simon Sinek氏の言うところのWhy-How-Whatのゴールデンサークルが、マッキンゼーでも存在する事である。マッキンゼーは傍らか見ればコンサル会社であるが、EMのトレーニングに参加した時、当時のグローバルトップのDominic Bartonは、「我々のミッションはグローバルリーダーを育てる事である」と断言していた。つまり、マッキンゼーの本質(Why)は、グローバルリーダーを育てる事、であり、世界で最も難しい経営課題を解く事(How)がそれに有効であるがために、日常は経営コンサル業(What)をやっている、という組織がマッキンゼーなのだと理解している。(それが正しいかどうかは別として)少なくともこのように理解をすると、社内の制度がなぜそうなっているのか、を一貫性をもって非常によく説明できる事に気が付いたのである(詳細は後述)。

 

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一方で、BCGはどうかと言えば、組織的にはオレンジ組織を抜け出していない。彼らは独特の価値観は持っているものの、それを組織運営の絶対的基盤として浸透させているわけではない。BCGに入社するとDay1で「自己責任」という言葉を叩きこまれると思うが、これはある意味Accountabilityを徹底し、同時にCompetitionを産む概念だと思う。BCGのWhyはどこまで掘り下げてみても「コンサルティング事業をうまくやる事」であり、それを基軸に組織設計がなされている。

 

上記を踏まえると、マッキンゼーはコンサル業を装ったグローバル人材輩出企業であり、BCGはコンサル企業と言えるのかもしれない。

 

そして2点目の「お財布の場所」について、これは前述の組織の進化形態に比べれば一見枝葉的な話に見えるものの、組織の力学に大きな影響を与えており、その組織の違い生み出す重要なドライバーであると考えている。自分はどちらのファームでもパートナーになったことがないので、詳細を把握しておらず断言はできないものの、BCGは明確にオフィスごとに予算が組まれており、「東京オフィスのコストは東京オフィスで賄う事」が原則だと理解している。逆に言えば、東京オフィス独自で何かに取り組みたい場合は東京オフィスのパートナーが了承すれば進められるので、ローカルの事情に柔軟に対応できるという利点もある。ローカルへのカスタマイズはBCGが重視している事の一つであり、それに即した組織設計と言えるだろう。一方で、マッキンゼーはGlobal One Firmを対外的にも標ぼうしており、お財布(予算)もグローバルなのではないかと推測している(マッキンゼーの各オフィスの予算などは、下っ端には完全にブラックボックスで、あくまで推測である)。この違いが、マッキンゼーとBCGの違いに繋がる、重要なポイントであると思う。

 

上記2点が相まって、マッキンゼーとBCGは体感として恐ろしく違う組織になっており、所属すればその違いは明確に感じ取る事ができる。