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人生の後半に向かっていくにあたり、自分の引き出しの中身を色々書いて一旦空にし、新たに学びを深めていかざるを得ない環境を作ろうと思って始めたブログ

新興のIT企業群が戦略コンサルをそれほど使わない理由

GAFAといった新興IT企業群は、戦略コンサルを頼ったとしても、かなり限定的なスコープのプロジェクトしか発注しないだろう。その理由は、アップルのように企業文化的な背景による部分もあるのかもしれないが、本質的には今の戦略コンサルには彼らのニーズにマッチした価値を提供できない事、にあるように思う

 

昨日の投稿で触れたように、GAFAといった新興IT企業群は戦略コンサルをあまり使わない、という。全く使っていないという訳ではもちろんないが、少なくともコア事業に関わる部分では使わないらしい(例えば、Googleが検索事業の戦略を練るのにBCGやマッキンゼーを雇ったりはしない)。これはなぜなのか。

 

幾つか理由があると思うが、重要なのは下記3点ではないかと思う:

  1. 戦略自体の重要性が低い
  2. 実行力(言い換えれば戦略ではなく「戦術力」)に重きを置いている
  3. 戦コンのケイパで欲しいのは「地頭の良さ」だけで、それなら卒業生を雇った方が早い・安い

 

まず1点目について、GoogleにしろAmazonにしろFacebookにしろ、既に「芯を食いまくった」ビジネスモデルを確立済みなわけで、今更戦略を立てるといったニーズはそもそもないと考えられる。後はひたすらビジネスモデルにのっとってオペレーションを回し続ければビジネスは拡大し強固になっていくわけで(それはデジタルビジネスの特徴でもある)、それは社内の既存のリーダーシップや優秀なエンジニアチームで十分なわけである。

 

むしろ彼らのビジネスにとって最重要なのは、「技術の栄枯盛衰」を見極める事なのではないかと考える。つまりどの技術が普及し、どの技術は衰退するのか、それを合理的に、かつビジョナリーに一早く見極める能力というのは、技術の進化が著しく早いデジタル世界では、まさに生死を分ける。例えば、Facebookは2012年にInstagramを約10億ドル程度かけて買収しているが、この判断がなければFacebookは既につぶれていたかもしれない。文字中心のSNSに代わって、よりユーザーのエンゲージメントが高い画像共有が普及する中で、Facebookは買収によってそのトレンドにうまく乗り、生き残ったのだ。(そのFacebookも、次のトレンドであった動画には乗り切れていないように思うし、この先仮想通貨に参入し、金融企業として生き残るのか、、)

 

戦略コンサルが、もしこういった技術動向に対して、なんらか非常に深い示唆を出すことができ、乗るべきトレンドをいち早く見つけるようなケイパビリティ―を提供できれば、GAFAでも喜んで使うのかもしれないが、残念ながらそういったケイパビリティ―を持つことは、業界の外にいるものにとっては非常に難しい。特にデジタル技術に関しては、非常に変化が速いので、常に最先端の研究者やスーパーエンジニアに触れてないとキャッチアップする事すら難しい。マッキンゼーやBCGも、Ex-GoogleやEx-Amazonを採用し、知見を社内に持とうと努力はしているが、悲しいかな、「Ex」になってしまった瞬間にその人の知見はどんどん古くなり陳腐化していく。それを持って、GAFA内部の人をも驚かせるような深い技術的・業界動向的示唆を出すことは不可能なのであり、結局はGAFAの中にいて思慮深い人の方がはるかに未来の予想を正確にできる、という事になる。

 

2点目について、そもそもGAFAのような(特に、GoogleAmazonFacebook)新興IT企業は、実行に重きを置いている。つまり、1億円かけて戦略コンサルを雇って、ポテンシャル市場を探索したりサイジング(=市場規模算定)したりしている暇があったら、同じ1億円かけてプロトタイプ作ってマーケティングしてみた方がはるかに価値が高い、と彼らは考える。それはデジタルの世界では至極全うな考えで、いけると思うなら、市場規模がどうであれ、とにかくプロダクトを作って出してしまえばいいのである。そもそもデジタルの世界では市場が突然顕在化するという事が繰り返し起こっているわけで、コンサルがやるような、サイジングや分析をする事自体にあまり価値がない(ユーザーの声を聴きまくる事は大切だが、、、)。

 

最後に3点目だが、もちろん新興IT企業でも何千人、何万人という規模になってくれば伝統的な産業の企業同様の様々な問題が発生してくる事は容易に想像できる。一言で言えば大企業病にかかるという事かもしれない。規模が大きくなれば、いい感じで現場をマネージできる人材も不足し、開発プロジェクトによってはカオスな状況になる事も多々あるだろう。そういった事を解決するのに、戦略コンサルの色々な知見を借りてももちろんいいのだが、合理的な彼らは、本質を見抜く。つまり、そういった問題の解決に必要なのは「知見」ではなく、「頭の良さ」だけですよね、と。つまり戦略コンサルをファーム経由で雇うより、頭の良さを持った個別人材を戦略コンサルから引き抜けばいいと考える。なので、GoogleでもAmazonでも、大量にEx-戦コンが転職しており、常に募集がかかっている。結果として、より戦略コンサルを雇う場面が少なくなるのだろうと思う。