わかるブログ

人生の後半に向かっていくにあたり、自分の引き出しの中身を色々書いて一旦空にし、新たに学びを深めていかざるを得ない環境を作ろうと思って始めたブログ

自分の思考を全て言語化する習慣

コンサルタントの基本動作として最も重要なものの一つは、自分の思考を全て言語化する事、だと思っている。これができる、できないは結構個人差があり、それはそのままコンサルタントしての質に反映される

 

自分で言うのは何だが、自分はチャートを書くのがかなり早く、しかも相当「きれい」だと思う。「きれい」というのは、チャートの中身、すなわちコンテンツが面白い、という事とは関係なく、単純に見た目が美しい、という意味である。正直、自分はチャートのきれいさという点では世の中のコンサルタントの上位5%に間違いなく入っているような気がするし、自分より美しく書ける人をほとんど見たことがない、というのが実感だ。

 

美しさとはなにか、と言えば、(実際のチャート抜きで、言葉のみでは説明しにくいが、)具体的には以下のようなことである:

  • テキストボックスが2つあり、縦にならなんでいたときに、そのテキストボックスの大きさ、端がきちんとそろっており、またテキストボックスの端から文字までの余白も統一されているため、文字も完璧にそろって見える
  • チャートの左端に来ることが多い、軸を示している色付きのボックスと、その右側におくテキストボックス(色はついておらず透明だとしても)の縦幅がきちんとそろっている
  • 例えばツーパネルのスライドで、2つの横に並んだテキストボックスと、その下に引かれた点線の長さはぴったり一致する

などなど。つまりは、端がぴったり一致していたり、透明であってもテキストボックスのサイズがそろっていたり、そういうレベルで作りこまれている、という事である。

 

そんなレベルでチャートを作って、時間がかかるだけでは、と思うかもしれないが、慣れるとこれは無意識に、かなり早くできるようになる。実際にこれらの技は、自分がBCGに入社して1か月後くらいに、「この人なんでこんなに美しいスライドを作れるのだろう」と興味をもったプロダクション(手書きのチャートをスライドかしてくれる部隊)の女性の方の後ろに1時間立たせてもらい、作業をみながら根掘り葉掘り質問させて頂いて以来、実践して身につけたものである。

 

本質的に重要なのは、その美しさではなく、「自分の思考を全て説明できるか?」という事にある。コンサルタントという職業の基本動作として、どんな些細な事でも、問われたことに対し、その場で合理的な理由をもって説明する・自分の意見を述べる、という事がある。例えば、クライアントに、「このテキストボックスのサイズと点線がずれてるんだけど、これ意味あるのか」と言われた時に(そこまで見てくるクライアントは実際にはいないと思うが)、答えられるかどうかは、実は極めて重要なのだ。「ああ、それには意味がないです」とか「意識してませんでした」といった回答をするコンサルタントは、その瞬間に「自分の考えが至らない部分がありました」と認めたようなものであり、「こいつ本当に“考え抜いて”くれているのか」という疑問をクライアントに無意識・意識的に持たせてしまうので、正直2流だと思っている。一流はそういった些細な事ですら、「テキストボックスと点線がおなじサイズなのは、構造化しているからという事を明示的に表しておりまして、、、、」みたいな流暢な説明ができるべきだと思う。

 

そのレベルで説明責任を負えるか、というのがコンサルタントとして重要であり、点線がずれていると問われた時に説明できない気持ち悪さがあるので、自分はそろえるようにしているのである。不思議なもので、細部にまで整った美しいスライド、というのは実際にはクライアントはそこまで意識してみていないものの、その美しさを「感じる」事はできており、思考が詰まっている、と理解を示してくれることが多い。

 

自分の思考を細部まで説明する。これは原則のようなものであって、すべてのコンサルタントが意識すべきである。

 

が同時に、その規律に従う事が、いかに脳みそを腐らせてしまうのか、という事はまた別のお話としてどこかで書きたいと思う。