戦術力の重要性
戦略よりもそれを実行する力、戦術力が圧倒的に不足しているという実感がある
日々現場でプロジェクトのマネージメントを支援している経験から、日本のスタートアップを含む至る所で、基本的な物事の実行力が圧倒的に欠如している、と感じている。大まかな方向性、つまり戦略は決まっている中で、それを「いい感じ」に実行できないのである。
「いい感じ」とは、すなわち以下である:
- 戦略の意図を十分に理解しており、
- その戦略を実行に移すのに必要な要素をある程度網羅的に把握した上で、
- 各要素を具体的な作業レベルのタスクに落とし込み、
- 各タスクの実行にどれくらいの時間がかかるかを概算しつつ、どういった順番で、どういったスケジュールで行うかを決め、
- 実行者に作業説明をして進捗管理・課題対応をしながら、
- 進捗を現場・経営陣にスムーズに(実行に支障をきたさないよう)コミュニケーションし、期待値コントロールする事
特に日本の組織において、この戦術力の欠如は甚だしい。原因は文化的・組織的なものも含め、ケースによっていくつも挙げられるとは思うのだが、まずその前提である「基礎能力」と「リーダーシップ」の2点が圧倒的に弱いと感じる。
まず「基礎能力」についてだが、前述のブレットポイントで書いた内容は、基本的な論理的思考能力、想像力、言語能力、作業能力が備わっていないとこなすことができない。実行に必要な要素をMECEに記述できないとお話にならないし、タスクへの落とし込みは、実行者の立場を想像して具体的に列挙できないと指示だしできないわけである。スケジュール立案も想像力と同時に、ざっくりと考える割り切り力、が必要だし、またシンプルに語れる日本語力・コミュニケーション力は必須だ。考えてみるとこういったプロジェクト実行に必要な基礎能力を鍛えるような教育を日本人は一切受けていないような気がするし、社会人になってからまじめに学ぼうという人は皆無に等しい。
そして「リーダーシップ」。リーダーシップが何かは、深遠なテーマなのでまた別のエントリーで書こうと思うが、一つの重要な要素は、基礎能力を駆使して状況を判断し、最適解を見つけて「これで行こう」と決断をする、その決断力である。リーダーシップも、日本人は学校教育の中で受けていない人が殆どだと思うが、欧米だとリーダーシップ教育という概念がきちんと整備されているので、この点は欧米人と日本人で雲泥の差がある。これは日本と欧米の新卒を見ても顕著で、BCG時代海外から来たプロジェクトマネージャーは口をそろえて「日本の新卒ってなんでこんなに仕事できないの」と言っていたが、要するにそれはリーダーシップ力、自分でドライブする力の欠如によるものだと理解していた。
まあ、日本全体でこう言った戦術力が欠如しているがゆえに、質の高いプロジェクトマネージメント力を提供するだけで飯が食えてしまうわけだが、国全体としては非常にまずいなーという危機感しか感じない