わかるブログ

人生の後半に向かっていくにあたり、自分の引き出しの中身を色々書いて一旦空にし、新たに学びを深めていかざるを得ない環境を作ろうと思って始めたブログ

コンサルティングファームと起業

自分がBCGに勤めた頃から比較しても、コンサルティングファーム出身者の起業家が顕著に増えてきている。しかし、これは「コンサルティングファームが起業家を育てるのに適した場所である(=コンサルティングファームにいくと起業家マインドが育まれる)」という事では“全く”なく(むしろ多くのファームではその逆で)、以下の3つの要因が絡んでいると思われる:

 

コンサルティングファームの新卒採用が拡大した

2000年代の前半、確かBCGでは新卒採用が2名とかだった気がするが、自分が採用された2008年(リーマンショック時だったな、、)時点では20名弱だった。どのファームも同じような傾向で、日本のコンサルティング市場が拡大すると共に規模拡大路線をとり、新卒採用を拡大させ、これは今日まで続いていると理解している。

 

新卒採用が増え、ファームの規模が拡大する、という事は同時に、「卒業者」も多くなるという事を意味する。つまり、若い(まだ起業を考えるような年齢の)コンサル出身者が世の中に増えだしたのは最近の話であり、それまでは「(実質的に)いなかった」というのが正しい理解だと思う。

 

②起業マインドを持った人の一定数が、コンサルティングファームを志望しやすい

これまでの経験から、「まずは色々なビジネス経験を身につけて、その上でできれば起業でもして、、、」といった感じでコンサルティングファームに入ってくる新卒の中から実際に起業した人間を見たことがない。一方で、実際に起業していく人は、最初から起業することを前提に、2~3年と明確に年月を区切っていることが多い。

 

性格特性の面からの信頼性の高い研究で、実は「起業家」になるかどうかは、5つの因子で図られる。いわゆる5因子モデル(Five factor model or Big Five model)で、外向性、情緒安定性、誠実性、協調性、経験への開放性の5つで構成される。起業家の場合、誠実性次元(なかんずく、そこに含まれる達成志向)と、経験への開放性が有意に高い事が分かっており、特に「経験への開放性」といた特性はコンサルティングファームと相性がいいのだろうと想像される。コンサルティングファームでは、2~3ヶ月に1回はプロジェクトが変わるため、常に新しい現場で色々なことを経験させられるが、それが起業家マインドを持った人にとっては苦痛ではなく快楽なのだろうと思う。

 

面白いのはこの5つの因子は、高校生までに固まっており、それ以降どのような経験を積んでも大きくは変化しない事が実証されていることだ。つまり、起業家になるかどうかは高校生までに決まっており、その後の経験は関係ない。ましてや、コンサルティングファームでの経験が、起業マインドを変化させることはないのである。つまり、冒頭に書いたように、起業する人間は最初から起業することを決めており、たまたま性格特性に一致したコンサルティングファームを社会人の第一歩に選んだだけ、という感覚的な事と一致する。

 

コンサルティングファーム出身者に投資しやすい

投資家視点で見ると、コンサルティングファーム出身者に投資しやすい、という事は顕著にあると思う。ビジネスをある程度理解しており、かつファームの採用に通った段階でかなりの高学歴(マッキンゼーの場合東大・京大卒なんて低学歴で、ハーバード卒とかもっと変な経歴ですごいやつがゴロゴロいる)が保証されているわけで、その中で起業マインドを持っているなら、投資しない理由がない、というか。後で「なんでこんな奴に投資したの」と責められるくらいなら、ピカピカの経歴の奴に投資した方がいいや、という心理は働いていると思う。

 

上記3つの要因から、近年コンサル出身者がそもそも増え、その中に一定数混じっている投資家マインドを持った人が、大型調達をして注目を集めやすい、が故に、目立ちやすいという事のような気がする。

 

強調したいのは、コンサルティングファームが起業家マインドを育てることに向いているという事は決してない事、むしろコンサルティングファームに長くいると、起業に必要な特性は失われていく、という事だ。なぜそうなのか、はまた別の投稿で記載したいと思う。