わかるブログ

人生の後半に向かっていくにあたり、自分の引き出しの中身を色々書いて一旦空にし、新たに学びを深めていかざるを得ない環境を作ろうと思って始めたブログ

プレゼンの極意

自分が人生で最も影響を受けた人物の一人(といっても、そもそもパッと思い浮かぶのは3名程度しかいないのだが、、、)は、間違いなく大学院時代にお世話になった研究室の教授だ。Rockefeller大学のShai Shaham教授。人格者だと思う。

 

アメリカという国のトップ10%くらいに入る人材は「本当にすごい」。日本では全くお目にかかる事のないような、地頭も、知識も、リーダーシップも、立ち振る舞いも、話しぶりも、全てが完璧に見えるような人間が存在する。自分なんか足元にも及ばない、という事を痛感させられるような人達だ。Shaiもそのような人物の一人だ。大学院時代に書いた論文がノーベル賞を受賞するくらいなので、頭がずば抜けていることはもちろん、人格的にも素晴らしい人だと思う。

 

不思議なもので、人間は自分には能力がないくせに、人の能力はかぎ分ける事ができる。小説を書くことはできないが、いい小説かどうかは読めばわかるのと同じだ。Shaiに初めて会ったのは大学院の講義で、だったのだが、最初の5分くらい彼の話を聞いて、「あっ、僕が教えを乞うべきはこの人だ」と思って、その日に彼の研究室に所属させてもらう事を決めていた。研究室のローテーションをするのもやめて、この人の学ぼうと、あっさり決めたのである。その判断は間違っていなかった。彼の研究者としての姿勢から、その後の人生の考え方に深く影響をうけた。今でも、自分が困ったときに、「こんな時Shaiはどう判断するだろうか」と思考をする事があるくらいだ。

 

その彼に、「プレゼンの極意は何だと思う?」という質問をしたことがある。当然Shaiは非常にうまいプレゼンをする人なのだが、それを聞くことで何か盗めないかと考えていた。彼の少し笑いながら、「人間は自分たちが思っている以上に頭が悪い。そのことを十分理解することだ」と答えた。要するに、大切なことを、シンプルな言葉で、シンプルに伝えてあげる、という事を意味していた。

 

なるほど。その時はそうとしか思わなかったのだが、立ち止まって考えるとこれは結構難しい事だ気が付いた。シンプルな言葉でシンプルに伝えるためには、つまるところ物事の本質が見抜けていないといけないのではないか。要するに何を言いたいのか、これは何を指示しているのか、違う見方はあるか、ある中でなぜ自分はその見方をするのか、そういった事を自問自答して、ようやく伝えるべきシンプルなメッセージにたどりつく。このころからだと思う、自分がシンプルに物事を言い切ろうとする姿勢を磨くようになったのは。そして英語の環境にいたこともよかった。日本語のように複雑な言い回しができないが故に、自分のつたないシンプルな英語でどう表現したらいいのかを考えるようになっていた。その努力が、のちにコンサルティングファームに入ってさらに磨かれたような気がする