わかるブログ

人生の後半に向かっていくにあたり、自分の引き出しの中身を色々書いて一旦空にし、新たに学びを深めていかざるを得ない環境を作ろうと思って始めたブログ

PPMのX軸

PPM(プロダクト・ポートフォリオマトリックス)のX軸は、色々な思考が詰まっていることが感じられて好きだ

 

プロダクト・ポートフォリオマトリックスPPM、下図)は、1970年代にBCGが提唱した事業の将来性を分析する手法だ(英語ではGrowth-share matrixと呼ばれている)。未だに、BCGといえばこのPPMをイメージする人も少なくないように思うが、それだけ世の中に衝撃を与えたのだと思う。そして未だに類似の分析(PPMの軸を少し変えたり、発展させたりした分析)をプロジェクトの中で行う機会もある。

 

f:id:digital_biz_pro:20191018222026p:plain

 

このPPMには、BCGのカルチャーというか、精神が非常によく反映されているなと思うし、会社ができた当初からそういったカルチャーだったのだろうなと想像される。具体的には、BCGは:

  • 何事もゼロベースで考え、面白い独自の知見(=Insight)を導き出すことに全力を尽くす
  • アウトプットの直感的な分かりやすさに徹底的にこだわる

という事を極めて大切にしている。この2点へのこだわりは、他の戦略コンサルファームを圧倒しているように感じるし、実際に他のファームのパートナーに聞いても、「BCGのアウトプットは極めてシンプルで、分かりやすいは分かりやすい」といった印象が返ってくる。

 

色々な複雑性はあるものの、事業をたった4象限に仕分け、そしてキャッチーな名前を各象限につけて(“Cash Cows”とか“Dogs”とか)シンプルに言い切る、というのがいかにもBCGらしい。もちろん聞いている側からすれば、そんなに簡単には割り切れないと思うだろうが、むしろそこが味噌で、あえて簡潔かつ強力なメッセージを放り込むことで、むしろ議論を誘発する効果があるのだ。

 

しかも、このPPM、(BCGらしく)シンプルに見えるようで、X軸にはかなりの思考が詰まっているように感じる。単純に自社の市場シェアをとるわけではなく、相対市場シェア(Relative market share)をとっている。 つまり、経験曲線の概念をベースに、相対市場シェアをとることで事業が産みだすキャッシュフローの大きさを推測できる、と言っている。ある事業が実際にどれだけのキャッシュを産んでいるかは、自社のデータであればわかるかもしれないが、他社のデータは通常手に入れられないのでわからない。しかし市場シェアは他社の製品・サービスでも推測でき、そこから事業の有望性は判断できるというわけだ。

 

簡単に入手可能なデータにひと手間加えて、ざっくり判断するにはこれで十分だ、というPPMの、特にX軸は秀逸だと思う。