PPMのX軸
PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マトリックス)のX軸は、色々な思考が詰まっていることが感じられて好きだ
プロダクト・ポートフォリオ・マトリックス(PPM、下図)は、1970年代にBCGが提唱した事業の将来性を分析する手法だ(英語ではGrowth-share matrixと呼ばれている)。未だに、BCGといえばこのPPMをイメージする人も少なくないように思うが、それだけ世の中に衝撃を与えたのだと思う。そして未だに類似の分析(PPMの軸を少し変えたり、発展させたりした分析)をプロジェクトの中で行う機会もある。
このPPMには、BCGのカルチャーというか、精神が非常によく反映されているなと思うし、会社ができた当初からそういったカルチャーだったのだろうなと想像される。具体的には、BCGは:
- 何事もゼロベースで考え、面白い独自の知見(=Insight)を導き出すことに全力を尽くす
- アウトプットの直感的な分かりやすさに徹底的にこだわる
という事を極めて大切にしている。この2点へのこだわりは、他の戦略コンサルファームを圧倒しているように感じるし、実際に他のファームのパートナーに聞いても、「BCGのアウトプットは極めてシンプルで、分かりやすいは分かりやすい」といった印象が返ってくる。
色々な複雑性はあるものの、事業をたった4象限に仕分け、そしてキャッチーな名前を各象限につけて(“Cash Cows”とか“Dogs”とか)シンプルに言い切る、というのがいかにもBCGらしい。もちろん聞いている側からすれば、そんなに簡単には割り切れないと思うだろうが、むしろそこが味噌で、あえて簡潔かつ強力なメッセージを放り込むことで、むしろ議論を誘発する効果があるのだ。
しかも、このPPM、(BCGらしく)シンプルに見えるようで、X軸にはかなりの思考が詰まっているように感じる。単純に自社の市場シェアをとるわけではなく、相対市場シェア(Relative market share)をとっている。 つまり、経験曲線の概念をベースに、相対市場シェアをとることで事業が産みだすキャッシュフローの大きさを推測できる、と言っている。ある事業が実際にどれだけのキャッシュを産んでいるかは、自社のデータであればわかるかもしれないが、他社のデータは通常手に入れられないのでわからない。しかし市場シェアは他社の製品・サービスでも推測でき、そこから事業の有望性は判断できるというわけだ。
簡単に入手可能なデータにひと手間加えて、ざっくり判断するにはこれで十分だ、というPPMの、特にX軸は秀逸だと思う。